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それから一同は布団にもぐりこんたがきっとしっかり眠れた者はいなかったに違いない。

大石もまた、例外ではなかった。

 

 


彼は布団に入り込むと先ほどのできごとについて想像を巡らせた。

 


大石は頭がよかった。

こと学校のテストにおいては毎回上位をキープするほどの実力者だった。

 

そんな彼の脳内では次々と第二次世界対戦ごろの内容が思い出されていた。

 

 


神風特攻隊。

青年を中心に結成された軍隊として有名だ。
突撃方法は非常に残酷で、1人乗りの飛行機で敵につっこむという戦法。

 

授業で習ったとき酷い話だ、と人事のように思ったことを覚えている。

授業でも軽く触れた程度の内容だったため、彼の頭からそれ以上の情報は引き出されなかった。

 

大石は情報を引き出す事を早々にあきらめ、情報を元に考えをめぐらせた。

 

 

神風特攻隊が今あるってことは、きっと今は1945年だ。

 

じゃあ今は一体何月何日だ?

きっと、この暑さじゃ7月や8月に違いない。

 

終戦はいつだった?

8月15日。

 

原爆は広島に8月6日、長崎に9日。

幸いなんの情報も入っていないからおそらく今は8月6日よりは前ということになる。

 

 

・・・となると・・・・・・・・・・・・

 

今は8月6日より前だ。

 

大石は数秒でそれだけのことを頭で考え、結論を導いた。

 

 

『あと数日で戦争は終わる!』

 

 

絶望していた大石にとってそれは一筋の希望だった。

長くても2ヶ月・・・いや、1ヶ月生き延びれば自分たちは助かるんだ!

 

 

************

 

 

同じ頃、乾もまた考えを整理していた。

 

 

乾は大石が気づいたことにとっくに気づいていた。

だが、彼は安堵はせずむしろぴりぴりした空気を漂わせている。

 

あと数日で戦争が終わるとはいえ、その『あと数日』で戦争に駆り出されれば終りなのだ。

死んでは意味がない。

 

 

乾はノートになにやら難解な数式を書き出していた。

乾の計算で導き出した推測では今日は7月25日あたり。

このままいけば、あと20日で日本は降伏し、戦争は終結する。

 

 

その20日、絶対に口にしてはいけない言葉は『日本が負ける』。

青年たちは、日本が勝つと信じて特訓を受けている。

そんな青年の瞳を曇らせるようなことを乾はしたくなかった。

 

そして、自分達が未来から来たということを相手に悟られてはいけない。

未来が変わってしまうからだ。

・・・残念だが、長崎や広島の原爆も避けられない。

未来を変えてはいけない、ということを乾は本能的に感じていた。

 

 

(だが・・・皆は受け入れてくれるだろうか・・・・・・)

 

青学には正義感のあるメンバーが多い。

きっと、原爆があるということを話して少しでも犠牲者を減らしたい、というやつがいるはずだ。

 

 

(さて・・・・・・どう反論するか)

 

 

乾は再び、ノートに視線を落とした。

 

 

************

 

 

河村もまた、同じ結論にたどり着いたがそれよりも彼が気になって仕方なかったのが訓練内容だった。

 

 

 

今日河村は、『愛機』を与えられた。

突撃するための一人のり飛行機のことだ。

 

突撃すればもう帰って来れない為、一人に一台飛行機が与えられる。

他のメンバーには与えられなかった。

全員で操縦方法を習った後、河村だけ呼び出しを受け実際に愛機を点検したのだった。

きっと河村のガタイのよさを見極め、判断を下したのだろう。

河村は愛機を受け取ったことをまだ誰にも話せずにいた。

きっと話せば皆は危険をかえりみずに河村を助けようとするだろうから、人のいい河村はこれからもそのことを言うつもりはなかった。

 

だが、恐怖は抑制できなかった。

 

 

(きっと、最初に突撃するのは俺・・・)

 

さきほどからその考えが頭を巡る。

今日教わった操縦方法が頭の中で反復される。

今日手入れしたあの飛行機で人生を終えるのか、と思うととてつもない虚しさが胸を襲ってくる。

 

 

 

死にたくない、河村は強く思った。

 

越前は河村の体が震えているのを、じっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

それぞれに

違った思いを抱え

戦いに挑む少年達

行き着く先は

同じだというのに

 

 

 









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