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「ったく・・・・・・どこなんだよここはーーー!!」

 

 

 

 

地面に手をつき、足を投げ出しているのは桃城武。

 

額からは大量の汗が流れ、とても暑そうだ。

 

 

 

 

海堂は怪訝そうな顔つきで桃城を睨みつけている。

 

 

「ふしゅ〜・・・・・・桃城、大体テメェがあんなこと言い出さなけりゃこんなことにはなってなかったんだよ。」

「あ゛ぁ!?テメェだってそれを承諾したじゃねぇかよ!連帯責任だ!マムシ!」

 

「・・・なんだと。もういっぺん言ってみろ。」

 

 

 

「あーーーもう。暑いってのにアンタたちのせいで余計に暑苦しい。」

 

越前は一人涼しい木陰の下に座って、帽子で顔をあおいでいた。

 

 

 

桃城と海堂は越前に突っかかろうとしたが、これ以上の口論は無駄な体力の消費だと考えたらしく、二人そろって越前と同じ木の下に座り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けどよー・・・なんでこんなトコに来ちまったんだろうな・・・・・・」

 

「・・・さあな。」

 

 

 

 

「これからどうなるんだろうな・・・・・・」

 

「さあね。でも、何とかなるんじゃない?」

 

 

 

 

桃城の問いかけに、越前と海堂は無関心だった。

 

まるで自分には関係ない、そう思っているかのように。

 

 

 

 

 

二人の危機感を感じさせない態度に桃城は少し腹を立てた。

 

 

「お前等なんでそんなに無関心なんだよ!いきなり意味わかんねーとこに来て、そんで手塚部長も大石先輩もいないんだぜ!わかってんのかよ!」

 

 

 「・・・・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

桃城が立ち上がって力説しているにも関わらず、二人の表情は相変わらず変わらないままだった。

 

いや、少し・・・桃城の気づかない程度に口角が上がったが。

 

 

 

 

 

「・・・・・・もうそろそろいいんじゃないですか?」

 

何のことだ、と桃城が言いかけたときに木の後ろからぞろぞろと誰かが出てきた。

 

 

 

 

 

 

そう、その誰かとは手塚・大石・不二・河村・菊丸・乾の6人だった。

 

 

 

「ぶ、部長!いつから・・・・・・!?」

 

「『これからどうなるんだろうな』あたりからだな。」

 

 

 

「そ・・・そうッスか・・・・・・・・・って越前!マムシ!てめぇら知ってて教えなかったのか!?」

 

 

「別に教える義務はねぇ」

「すぐ後ろにいたのに気づかない桃先輩が悪いんスよ。」

 

 

二人は涼しげな顔で顔を真っ赤にした桃城を眺めていた。

 

 

 

「・・・・・・てめぇらいい加減にし

「はーい、ストップストップ♪喧嘩はよくないよー」

 

 

 「なっ!英二先輩!」

 

桃城がついに二人にキレたとき、菊丸が間に入って桃城を止めた。

 

 

 

 

「それよりさっ、俺たちが来たってココがどこだかなんてわかんないし・・・これからどうするか話し合おうよ。」

 

 

 

「クスッ・・・そうだね、じゃあ越前。キミたちはどうやってここに来たの?」

 

 

桃城と海堂、越前のやり取りをずっと微笑みながら見つめていた不二が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

越前は帽子を深く被りなおすと、これまでのいきさつを説明しはじめた。

 

 

 

 

「・・・・・・最初、俺が気づいたんすよ。先輩たちも見たと思うスけど、穴。」

 

 

あのとき、越前たちが消えた場所には人一人が丁度通れるくらいの大きさの穴・・・トンネルと言ったほうが良いのだろうか・・・が空いていた。

 

注意力が相当ないと見落とすほどの穴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい、越前!何立ち止まってんだよ!』

 

『ふしゅ〜・・・さっさと行け。』

 

『・・・って何だその穴?!』

『さあね。』

 

 

『何か人が丁度通れるくらいじゃねぇか!入ってみねぇか?なんか、異次元とかに繋がってそうじゃん。』

 

 

 『ふしゅ〜・・・んなわけねーだろ。』

『んだよ、マムシ。怖いのかよ?』

 

 

『そうとは言ってねぇ。・・・・・・行こうぜ。』

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・・ってわけ。」

 

越前が一通り話をし終えると、乾はノートに何かを書き出し、手塚は相変わらず難しい表情で、大石は腕組みをし眉間に皺を寄せた。

 

 

 

 

「成る程・・・・・・じゃあ俺たちが来たときとあまり状況は変わらないってことか。越前、あとガラスの割れるような音、しなかったかい?」

 

大石の質問に、越前は数秒考えると、思い出したように言った。

 

 

 

 

「ああ・・・そういえば、途中ですごい耳鳴りがして意識が一瞬遠くなったッス。」

 

越前の言葉に、桃城と海堂もすぐに思い出した、というように同意した。

 

 

「それなら俺もなったぜ。」

「ふしゅ〜・・・俺も。」

 

 

「耳鳴りか・・・俺たちはしなかったよな。」

河村の呟きに、菊丸、大石、不二が頷いた。

 

 

 

「ということは俺たちが来たときと、越前が来たとき、違うことは耳鳴りと意識が少し遠のくということのみらしいな。」

 

乾がノートから目を離さずに上手く話をまとめた。

 

 

 

 

 「問題はこれからどうするかということだな。ここはどうやら森のようだが、俺たちがさっきまで居た場所とは微妙に景色が異なっている。となると、何らかの理由で別の場所へ移動してしまったと考えるのが自然だ。」

 

 

乾の言葉に、一同はしばらく黙り込んだ。

 

 

 

 

 

が、突然菊丸が口を開いた。

 

 

「な、じゃあさ、あの建物に誰かいるかもしんないし。聞きにいけばいーじゃん。」

 

 

 

 

「・・・建物?英二、そんなものあったっけ?」

 

みんなの表情が一斉に「?」になったのを不二が代表して菊丸に尋ねた。

 

 

 

 

「うん。俺目いいからさ、ちょこっと見えたんだ。たぶんあっち。行く?」

 

 

 

もちろん、彼等に選択肢などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

菊丸の先導で一同が歩き始めて五分ほどで、建物の前に着いた。

 

歩いている間は、全員何も喋らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・これが建物っスか・・・。」

 

 

ぼそっと越前が呟くのもムリはない。

 

 

 

そこはまるで、掘っ立て小屋。

 

人の住んでいるような場所には見えない。

 

 

 

だが、建物からは終始凄まじい音が聞こえてくる。

 

何を言っているのかよく分からないが、武道でもやっているのだろうか・・・とにかく叫ぶような声が聞こえる。

 

 

 

 

 

一同がその建物の風貌と、中から聞こえる声にぼんやりとしていると、ふいに後ろから低い声が聞こえた。

 

 

 

 「おい、お前等。そこにいると邪魔だ。ん・・・?新入りか?」

 

 

 

 

 

一斉に振り向くと、そこにはガタイのよい目つきの悪い大男が仁王立ちになっていた。

 

 

目つきの悪いその男は、一同をギロリと睨み、「付いて来い」というかのように、建物の入口へと歩き始めた。

 

 

どうする?と問いかけるかのように一同は一斉に手塚に視線を送った。

 

 

手塚は、大男と建物を一瞥すると、小声で「行こう。」と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

建物に着くと、なにやらみすぼらしい格好をした男二人が大男を見た途端にお辞儀をした。

 

 

男たちの目が手塚たちへ注がれるのに気づくと、大男は「新入りだ」と告げ、中へ進んでいった。

 

突き当たりの壁には、なにやら和紙に達筆で描かれている文字があった。

 

 

 

 

そこに墨汁で記された文字は『神風特攻隊』。

 

 

「神風特攻隊?」 越前が不思議そうに小声で呟いた。

 

 

 

 

 

 桃城や海堂も同じような反応で、菊丸は「うーん・・・聞いたことあるよーな・・・」と頭を捻っている。

 

 

だが、他のメンバーの表情がその文字を見た瞬間がらりと変わった。

 

 

無表情な手塚ですら驚きの表情を隠せずにいた。

 

 

 

 

 

 「・・・・・・まさか・・・。」

 

声を発したのは大石だった。

 

 

 

 

 

「・・・乾、これって

「ああ。でもわからない。他の可能性も有りうる。下手に推測してあいつ等を混乱させるのもいけない。今はとりあえず黙っておこう。」

 

 

 

不二が耐え切れずに乾にたずねると乾は不二の言葉を制してなにやらノートに書き込んだ。

 

 

 

 

”あいつ等”というときに、乾は桃城たちのほうを一瞬ちらりと見た。

 

 

乾の手は、不二たちに見えないところで震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

嫌な予感がしたんだ

でもその予感は願わくば

外れてほしいと思ってた

まだ希望を捨ててはいなかった

 

 

 

 

 

 









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