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暑い。日差しが暑い。気温が暑い。

全てが暑苦しい。

 

 

そんなうだるような暑さの日に、青春学園男子テニス部のレギュラー強化合宿は開催された。

合宿所は都心を外れた山奥の民宿。

 

補欠を入れた9名のレギュラー達は、早朝に学校の前に集めさせられた。

 

 

 

「よーし、みんな集まったな」

顧問の竜崎スミレは、両手を腰において満足そうにレギュラーたちを見渡すと言った。

 

 

そして一度力強く頷くと、「先に合宿所へ行って待っているぞ!」と言い、孫の竜崎桜乃やその友達、小坂田朋香を引き連れ車に乗り込んだ。

 

辺りには今竜崎が乗っていった車以外にバスや車らしきものはない。

 

 

 

 

 

「・・・え。俺たち何で行くんすか?」

 

唯一の1年生レギュラー、越前リョーマが誰ともなしに呟く。

 

 

 

すると、竜崎が走る車の窓から身を乗り出し、大声で叫んだ。

「お前等は走ってこい!!」

 

 

 

 

 

 

あたりにしばらくの沈黙が訪れたが、しばらくすると不協和音が鳴り響いた。

 

 

 

 

「くそー!ハメられた!」

悔しそうに地団太踏むのは2年の桃城武。

 

 

「あのババア・・・・・・」

ふしゅ〜、と口を尖らせ悪態をつくのは同じく2年の海堂薫。

 

 

「クスッ・・・まあそういうことかなとは思ってたけどね。」

3年の不二周助はなんともいえない微笑を浮かべると、隣りに居た乾貞治に目配せした。

 

「ああ。竜崎先生が俺たちに走れという確率はそう低くはなかったからな。」

 

 

「ハハ・・・流石乾。」

そんな二人のやり取りを見て苦笑を浮かべているのは3年の河村隆。

 

 

 

「むぅーー、で、どーする?走ってく?」

ふくれっ面をしながらも、どこか楽しそうなのは3年の菊丸英二。

 

 

「そうだな・・・・・・どうする、手塚?」

隣りで相槌を打ちながら腕を組んでいるのは3年でありテニス部副部長でもある大石秀一郎。

 

 

 

 

突然決断を委ねられたのに、一つも表情を動かさないのが3年部長の手塚国光。

 

 

「・・・・・・行くしかないだろう。」

 

 

その一言で、一同は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

数十分も走ると、あたりはすっかり山に囲まれていた。

 

 

 

「手塚、どうする、このあたりで団体行動か。」

乾がずれた眼鏡を直しながら隣りを走る手塚に聞いた。

 

「そうだな・・・この辺は俺もよく道を知らない。乾、先導を頼む。」

「ああ、わかった。なら、手塚はあいつらを集めてくれ。」

そういうと乾はコンパスと地図を取り出し、なにやら計算を始めた。

 

「ああ。」

 

 

 

手塚が部員に呼びかけようとした丁度その時、前方からまるでガラスを割ったような凄まじい音が聞こえた。

 

 

 

ガシャーン!

 

 

 

「・・・なんだ今の音は。」

 

「おそらくあの距離は越前と桃城、それに海堂あたりからだろう。かなり飛ばしていたからな。」

乾も計算をする手を止めて、前方を見つめている。

 

「やあ。今の音は・・・・・・まさかキミたち?」

そこへ走ってきた不二と河村がやってきた。

すぐ後ろから大石と菊丸がやってくるのが見える。

 

 

「いや・・・。」

「なになにー?みんな立ち止まっちゃって。」

「何かあったのか?」

大石と菊丸の距離まではあの音は聞こえなかったのだろう、二人とも不思議そうな顔をしている。

 

手塚は事の次第を簡単に二人に説明した。

 

 

「それは越前たちが関わっていると考えていいのか?」

大石は腕組みをしながら乾にたずねた。

「ああ。ほぼ100%だ。あれほどの音だと人間が関わっているとしか思えない。なお、このあたりに他の人間がいるとは考えにくい。」

 

「そっか〜桃たちガラスでも割ったのか〜?」

「いや、それはないだろう。このあたりにそんなものはあるはずがない。」

「じゃー乾は何でそんな音がしたと思うんだよー!」

「それは・・・

 

「もういいじゃない。それより、早く3人の様子を見に行こうよ。僕もアレが何の音だったのか気になるし。」

 

口論になりかけた菊丸と乾の間に入ったのは不二だった。

不二はそう提案すると、先立って歩き始めた。

 

 

「・・・・・・さあ、行こう。」

 

不二の背中を数秒見つめた後、手塚が言った。

一同は音の正体そして、越前・桃城・海堂の安否を確かめるべく歩き出した。

 

 

 

 

 

それはあの日と同じ、とても暑い日でした。

空もとても青くて綺麗でした。

まるで夢のようなひとときでした。

 

 

 

 

 









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