幸せなんか、ないと思ってた。

 

 

 

 

 

 

この世の何処を探しても、どんだけ頑張っても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生まれてきたこと・そして今生きてること――その不幸を消し去れるほどの幸せなんか。

 

 

 

 

 

 

 

この世には存在せんと思ってた。

 

 

 

 

 

 

 

後悔のない、人生なんて送れやしないと

 

 

 

俺の、色褪せた白黒の世界にはもう、光が差し込むことはないと思ってた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいテメェ。勝手にコートに入ってんじゃねぇ」

 

第一印象は、『幸せそうな奴』・『恵まれた奴』

そんなところやった

 

傲慢な態度も、立ち居振る舞いも、全てが自信に満ち溢れていて。

どっから見てもお坊ちゃま、今まで何不自由ない暮らしをしてきたんやろうと思った。

青い鋭い瞳からも、凛とした姿勢からも、希望が満ち溢れてて。

 

俺とは、正反対やと思った。

 

 

 

 

 

「ハッ、そんなことはどうでもいい。さっさと入部しやがればーか」

 

部活をやろうか迷ってたとき、アイツは強引に俺をテニス部に入部させた。

 

アイツは、人をぐいぐいと引っ張ってく。

そのくせ本人は他人の人生を自分が変えているという自覚なんてほとんどなくて。

あそこまで本能のままに生きて許されるんはアイツくらいやろうなと思った。

 

 

 

 

 

「忍足。お前はダブルスに入ってもらう」

 

俺を岳人とのダブルスに推したのはアイツやった。

アイツが俺に足りんもん全部見抜いて、推薦したんやった……

 

俺はそのとき心底驚いた。

そんで気づいた。

 

アイツは一人残さず、『200人の部員全員をちゃんと見てるんや』、って。

 

 

 

 

 

「ばーか、自信ってのはつけるモンじゃなくて持つモンなんだよ」

 

アイツの人間性には驚くことが多すぎて、俺を捕らえて放さんかった。

 

アイツの自信には根拠なんてない、何の根拠もないからこそ崩れにくく強いんだ。

そうアイツは言ってた。

 

俺はただただアイツに見入るばかりやった。

 

 

 

 

 

「忍足。お前、人生楽しいか?」

 

唯一の弱点・心の中さえもアイツにかかればいとも簡単に見抜かれた。

 

俺はその時、ただ泣くことしかできんくて。

 

 

傍におってくれたアイツが、たまらなく特別な存在に感じれた。

 

 

 

 

 

「俺様の美技に酔いな!」

 

アイツの、喜怒哀楽の落差が激しい感情、それごとにくるくる変わる表情。

 

いつもの不機嫌そうな顔も。

時折見せるあどけない笑顔も。

ふいに真剣になる『部長』としての顔も。

 

俺は、心底愛しいと感じたんや。

 

 

 

 

 

「なぁ、忍足。俺は―――どうすればいい・・・?」

 

時折姿を見せるアイツの弱さ。

心を許したときだけ、踏み入ることを許される領域。

 

何も求められやしんかった。

何も言わずただ、傍におっただけやった。

でもそれだけでアイツの背負う重荷が伝わってきた。

 

一時間も経てばアイツは帰っていった。

その背中は、強さに満ち溢れてて、小さかった。

 

 

 

 

 

 

思い浮かぶのは、いろんなアイツ。

 

電話したときのアイツ、部活のときのアイツ、休日のアイツ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、お前が好きだぜ?」

 

 

俺が、心底愛したたった一人の人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「跡部・・・」

 

 

今、アイツは俺の目の前で眠ってる。

 

 

 

 

 

綺麗なその瞳が開くことは、きっと永遠に、ない。

 

 

 

紡がれた口から、勝気な言葉を聞くことも、もう二度とない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ありがとうな」

 

 

 

 

 

アイツは、俺に、小さな贈り物をしてくれていた。

 

 

 

 

アイツのおかげで、俺の世界はいつの間にか光が差していた。

 

僅かに色味が差していた。

 

 

 

 

 

 

 

それは、たった少しの明かり、希望やったんかもしれんけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺にとっては。

 

 

 

 

 

 

俺が 

 

 

 

 

俺が

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が今まで生きてきてよかったって思えるのには。

 

 

 

 

 

俺が自分の人生をこれからも歩んでいくのには。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十分すぎるくらいの、贈り物やった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおきに、跡部。もう、ゆっくり休み―――」

 

 

 

 

俺の頬を伝った涙は、透明だった。

 

 

 

 

 

 

〜END〜

 

 

 

舞さんへの誕生日プレゼントとして捧げます!!

な、なんだか・・・暗っ!しかも短い!

小説というよりもポエムな感じだと思っていただけると嬉しいです!

というか忍足の過去に何があったんだそして跡部は何故死んだんだという話ですよね(汗

捏造しすぎるのもよくないので書いていないのですがご自由に想像してくださると嬉しいです☆

一応誕生日プレゼントということなので、テーマは『生まれてきてよかった。これからも生きていこう。と思える瞬間』という無駄に壮大なテーマです(汗)

 

こんなものでよろしければ受け取ってやってくださいませorz

 

 

 

 

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