FOREVER

 

 

 

 

アリエナイ。

 

アリエナイアリエナイアリエナイ。

 

 

 

だって

 

 

 

そんなことあるはずがない。

 

 

 

 

意味わかんねえ

 

 

 

ふざけんな

 

 

 

なんで?

 

 

 

俺が・・・・・・・この俺が

 

 

 

 

「白血病・・・」

 

 

 

マジで

 

アリエナイから。

 

 

 

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放課後の立海大附属のテニスコート。

 

 

全国大会まであと1週間を切った。

今はまさに全国大会へ向けての追い込みだから、部員たちの表情にも気合が入っている。

今日もその過酷ともいえる練習が始まろうとしていた。

 

 

 

 

「遅いですね丸井くん。ジャッカルくん、何か知らないですか?」

 

今日は大会に備えてレギュラー同士で練習試合を行う予定だった。

 

ダブルスは丸井・ジャッカルペアVS仁王・柳生ペアの予定だったのだが丸井が一向に姿を現さない。

いつも試合と聞いたらすぐに飛んでくる丸井が遅れるなんて珍しいことだったから柳生は思わずジャッカルに尋ねたのだった。

 

「ああ・・アイツなら、何か再検査があるとか言って早退して病院行った。けど、部活には間に合うように来るって言ってたけどなあ・・・」

 

 

 

 

そのとき仁王は校舎の方向から歩いてくる赤い髪の少年を見つけた。

 

「お・・噂をすれば、かの?」

「ああ、そうだ。おーい、ブン太早くしろ!」

 

ジャッカルが大声で呼びかけたが丸井は一向に歩くスピードを早めようとしなかった。

いや、それ以前にうつむいてジャッカルの声が聞こえていないかのようだった。

 

 

 

「丸井!遅れてくるとはたるんどるぞ!!!」

「いや、弦一郎。診察の時間などは丸井の力ではどうにもできないこともある。それに遅れたといっても五分程だ。」

 

柳が真田に対して反論すると真田は少し罰の悪そうな顔をして丸井に「ウォーミングアップをしたらすぐに試合だ」と告げ、帽子を深く被りなおした。

 

 

 

 

「それにしても丸井先輩!今日何の再検査だったんすか!?あ、もしかして・・・糖尿病っすか!?」

「ブン太甘いもん好きだからな・・・・ありえるぜ」

 

切原とジャッカルがふざけて丸井をからかう。

だが、丸井は俯いたままだった。

 

 

 

 

しかしごく小さな、か細い声で呟いた。

 

「・・・・・・病だよ」

 

 

 

 

「・・・・・・え?」

誰一人として丸井の言葉を聞き取れたものはいなかったらしく全員が一気に丸井に視線を集める。

 

 

 

 

 

「糖尿病じゃなくて白血病だったっつってんだよ」

 

 

 

全員が耳を疑った。

 

 

しばらくの沈黙の後、言葉を発したのは切原。

顔は蒼ざめている。

 

 

 

 

「・・・・・・え?・・・・・・じょ、冗談ッスよね丸井先ぱ

「うーっそだよバーカ!なわけねーだろぃ?あー皆簡単に騙されんだな。」

 

 

 

丸井があはははっと笑うと全員あっけにとられたような顔をした。

そして次の瞬間安堵のため息を漏らした。

 

 

 

「ブン太・・・びっくりさせんなよ」

「まったくもって・・・やられましたね」

「俺としたことが予測不可能だったな」

 

 

 

「丸井!!たるんどる!」

言うまでもなく、この日の丸井のメニューは厳しかった。

 

みんなの笑い声がコートに響く中、ただ一人仁王だけが、丸井のことを鋭い視線で見つめていた。

 

 

 

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医者にはすぐに入院しろと言われた。

母親にはテニスをやめろと言われた。

 

 

今の時代白血病は決して治らない病気ではないらしい。

骨髄移植だとか抗癌剤だとかで治る可能性も高まってきている。

 

だけど、治療には根気がいる。

今やって今治るわけじゃない。

 

 

それじゃあ駄目だ。

全国に間に合わない。遅すぎる。

 

俺は今みんなと一緒に居たい。

今テニスがしたいんだよ。

 

 

幸村も入院している今、誰一人欠けるわけにはいかない。

だから・・・・俺は絶対に退くつもりはない。

 

 

 

今日本当のことを言おうとした。

でも、みんなのそのときの驚愕の表情を見て思った。

 

「ああ、こいつらは本当に俺を必要としてくれている」

 

 

 

だから、俺は例えこの病気で死ぬことになったとしても、最後までテニスを続ける。

これは俺の誓い。

 

 

あと1週間したら全国が始まる・・・。

決勝まで、絶対に生き延びる。

引退なんてしたくねえ。

 

 

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今日は全国へ向けて、最後の練習。

 

同時にオーダーの発表。

オーダーの発表といっても、レギュラーはもう決まっているし、形だけの発表。

 

 

 

コートに真田が1枚の紙を持って現れた。

一見中学生らしからぬ風貌は、初めて見るとコーチかと思わせる。

今でも、1年生なんかは遠くから来る真田を見て先生、と思わず言ってしまうこともある。

 

 

真田は咳払いをするとかしこまって言った。

 

「D2丸井・ジャッカル。D1仁王・柳生。S3柳。S2切原。S1は俺だ。依存はないな」

「真田。ちょっとええか」

 

 

いつも全員が暗黙の了解となっているオーダー発表だから、口を挟むものが出るのは珍しく、真田は少しうろたえた。

 

「ああ・・・何だ」

 

 

 

 

「俺は、ブン太は出さんほうがええと思うんじゃけど」

 

 

 

 

「?!」

 

 

「ちょ・・・・何言ってるんスか仁王先輩!」

「そうです、仁王くん。今更無茶です」

 

「俺ブン太と以外のコンビネーション練習してねぇし・・・」

全員が仁王の突拍子もない科白に一斉に反論したものだから、コート内はにわかに騒がしくなった。

 

 

 

当の丸井は、ガムを噛みながら片手をポケットに突っ込み、状況を見守っているようだった。

 

 

 

騒ぎを鎮めたのは柳だった。

「まあ落ち着け。仁王、俺としては何故お前がブン太を出すことに反対するのかその理由を知りたいところだ」

 

 

「お前等気づかんのか。ブン太は最近注意力散漫じゃ。来た球も返さん、よそ見はする、全国はそんなんで通用するほど甘くないぜよ。みんなの足を引っ張るだけじゃ」

仁王はそう言うと丸井を鋭い瞳で見た。

丸井は相変わらず下を向いてガムを噛んでいた。

 

 

 

「フム・・・確かに仁王くんの言うことも一理あります。丸井くんはここ数日練習をおろそかにしていた傾向がある」

「んー俺はどっちでもいいッスよ。どっちみち勝てればいーんだから。先輩たちで決めてくださいッスよ」

柳生や切原も仁王の意見に賛同しはじめ、流れは丸井に圧倒的に不利になっていた。

 

 

 

 

「弦一郎。皆はこう言っているが・・・・決断権はあくまでお前だ。」

「ちょっと待てよ!何勝手に話し進めてんだお前等」

 

柳が真田に視線を向けたとき、物凄く大きな声で誰かが怒鳴った。

 

 

 

全員が一斉に向いた方向、それはジャッカル桑原の方向だった。

 

全員が驚いた顔つきを隠せないで居た。

それもそのはず、この中でジャッカルが怒鳴るところを見た者はきっと丸井だけだったからだ。

普段温厚な彼が怒りをあらわにすることは今まで一度もなかったから、場は一気に静まり返った。

 

 

ジャッカルは全員の視線を受け、少し罰の悪そうな表情を覗かせたが、怒りの方が優っていたらしい、そのまま言葉を続けた。

 

「ブン太のことは俺が一番よく知ってる。俺は、ブン太とじゃなきゃダブルスを組む気はしねぇ。ブン太をおろすなら俺もおろせ」

そういってジャッカルは真田をにらみつけた。

 

普段なら人を睨みつけるなんてことをしないジャッカルに睨まれ、真田は少し怯んだが、帽子を被りなおすと言った。

「いや・・・その必要はない。オーダー通りでいく、いいな、仁王」

 

 

仁王は真田とジャッカルを一瞬横目で見ると、「勝手にしんしゃい」と言い、コートから去っていった。

 

 

 

 

ジャッカルは、まだガムを噛んでいる丸井に声をかけた。

 

「ブン太・・・頑張ろうな」

「・・あったりまえだろぃ?・・・・なあ、ジャッカル」

「何だ?」

 

 

「もし俺が死んでも死ぬまで俺のこと忘れんなよ!」

丸井の突拍子もない言葉にジャッカルは少し驚いたが笑って言った。

「・・・・ああ。」

 

立海大附属のD2の絆は固かった。

 

 

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全国大会1回戦、立海大附属の試合まであと五分。

 

 

 

「いよいよだな」

 

ジャッカルが丸井に声をかけるが、丸井から返事はなかった。

心なしか丸井の顔が青白いのは、緊張のせいだろう、とジャッカルは推測した。

 

 

 

『只今より、第一試合を行います。D2、前へ!』

会場のアナウンスが入り、ジャッカルはコートへと足を進めた。

 

 

 

だが、肝心のパートナーが隣りにはいなかった。

見ると丸井はユニフォームの胸元を強く掴んでうずくまっていた。

 

「・・・・ブン太?どうしたんだ?」

「・・・・っ・・・何でもねぇっ・・・・行くぜぃ」

 

 

ブン太はそう言いつつ、コートへと入ったが、その様子はゾンビのようにふらふらだった。

 

「おいっ・・・ブン太!お前大丈夫じゃねぇだろ!」

「・・・・う・るせぇ・・・早く、終わらせ・・・・

 

 

ドカッ

 

 

 

そう言い掛けて、丸井は突然倒れた。

一瞬のことで、ジャッカルはただ見ているだけしかできなかった。

 

 

倒れた拍子に頭がポールにぶつかり、丸井はコートに倒れこんだ。

 

 

 

 

「おいっ!?ブン太!?」

ジャッカルが呼びかけたが、返答はなく、丸井の頭からは赤い血がとめどなく流れ出していた。

 

 

審判が慌てて審判台から駆け下りてき、他のレギュラーも思わずベンチからコートへとやってきた。

 

「担架を!」

審判が言うと同時に、待機していたのであろう救急隊員が駆けつけた。

 

 

 

隊員は丸井の意識と脈を確認すると、「救急車で搬送します」と言って丸井を担架に乗せた。

 

 

もう一人の隊員が真田の方を向いて「先生や皆さんも付き添い願います」と言った。

このときばかりは、真田も『先生』という言葉が聞こえないようだった。

 

 

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窮屈な救急車の中で、6人は丸井の顔を眺めていた。

救急隊員が止血しようと必死になっている声も、6人にはどこか遠くで何かを言っているように聞こえた。

 

 

病院に搬送されるとすぐに丸井は手術室へと担ぎ込まれた。

『手術中』のランプが灯る病院の廊下で6人は何も喋らなかった。

 

 

何時間ほど待ったのだろう。

6人にとってそれは永遠の時間にも感じられた。

 

 

手術室のドアが開いて、医師と看護婦がびっしょり汗をかいて出てきた。

 

 

 

 

 

「残念ですが・・・・・丸井くんは、出血多量で死亡しました。」

 

医師の言葉に全員が言葉を無くした。

 

 

 

 

「・・・・は?どういうことだ!?何だよそれ!!!」

「ジャッカルくん、やめなさい」

 

思わず医師に掴みかかろうとしたジャッカルを柳生が必死に取り押さえたが、ジャッカルは叫ぶことをやめようとはしなかった。

 

 

 

 

「・・・アンタ、ふざけてんじゃねえよ!ほんとに全力尽くしたのかよ!?あの程度の怪我で死ぬわけねえじゃねえかよ!」

 

 

「・・・・じゃあ聞くけれど、君たちは何故丸井くんが『白血病』に侵されていると知って試合に出場させたんだ?」

医師は、涼しげな顔をしてそれを言い、看護婦と共に去っていった。

 

 

 

 

ジャッカルは医師を追いかけようとしたが、その言葉を聞いて廊下に座り込んだ。

 

 

 

「・・・・白血病・・・・?何それ、俺ら聞いてないっすよね・・」

切原が思わず呟く。

 

 

 

 

「だから言ったのに。アイツどうしても全国出るって・・・・聞かんかったんじゃ・・・・・だから俺は皆の前で、ブン太が出れんようにすればええと思うたのに・・・」

仁王は、泣いていた。

普段表情をあまりあらわにしない仁王が、涙を流す様子は他の者にとって『丸井の死』をリアルに感じさせた。

 

 

 

「私も・・・・あのとき全力で止めるべきでした。周りを見れませんでした。」

柳生が、仁王を慰めるかのように言った。

 

 

「いや、俺の観察力が足りなかった。あのとき、俺は自分のことで手一杯だった。仁王や柳生のせいではない」

 

 

 

「無理しおって・・・・・たるんどるわ。」

真田もそんなことを言いつつも涙を流していた。

 

 

 

 

「ジャッカル、大丈夫か」

座り込んだままのジャッカルに気づいたのは柳だった。

 

 

 

 

ジャッカルの瞳は虚ろで、頬には涙が伝っていた。

 

「アイツ・・・言ったんだよ、死ぬまで忘れんなって・・・・・死んでも忘れられねぇっつの・・・!!!なんで・・・・なんで言ってくれなかったんだよ!!!」

 

 

ジャッカルの叫びが、病院の廊下に悲痛に響いた。

 

 

 

 

 

〜END〜

 

 

 

鴻夜さん、2600Hitありがとうございました!!!

リクは、「ブン太で暗い系パロディ」でした。

何のパロディにするか迷ったのですが、セカチューパロに落ち着きました。

基本的にブンジャ、ニオブンが好きなのでその二人だけは特別な感じにしてみました。

長くなってしまいそうなので省略していたら微妙な文になってしまいました・・・・すいません。

ではでは、リクありがとうございました★

 

 

 

 

 

 

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