PROTECTS

 

 

 

 

誰かが、俺を呼び止めた

 

誰かが、俺を突き飛ばした

 

 

 

 

「岳人!!」

 

「・・・・・・!?」

 

 

 

 

それは一瞬の出来事で、俺は事態を理解するのに数十秒を必要とした。

まず、車のヘッドライトが眩しすぎて、何が起こったのか見えなかったんだ。

 

でも、その声、そのシルエットで誰が俺の前に飛び出したのかはすぐに解った。

 

 

 

 

 

そして今、俺は全てを理解した。

俺は、庇われたんだ。

 

 

 

「・・・・・・侑・・・士?」

 

道路はほとんど血に染まり、血の川は歩道まで届こうとしている。

そして、目の前には俺の、大事な人。

 

 

 

周りの奴らが何か叫んでいるけれど、俺には聞こえない

俺の頭は真っ白だった

 

 

 

 

「侑士・・・?なあ、侑士!」

 

 

侑士は、人形のように動かない

 

その口は貼り付けられたようで動く気配など全くない

 

 

 

「侑士!返事しろよ!・・・・・・侑士!」

侑士の体を揺さぶると、更に血が流れ出した

 

 

 

俺は侑士の傷口を両手で押さえた

 

俺の手がどんどん侑士の血で染まっていく

血は熱くて、それが侑士の生命なんだと思った

 

 

 

 

「血・・・・・・止まんないじゃん・・・なあ・・・・・・っ!侑士!」

 

 

涙が溢れてくる

 

 

嫌だ 

泣きたくなんてないのに

 

泣いたら侑士が死ぬみたいじゃないか

侑士は生きるんだ 

だから泣く必要なんてないのに

 

 

 

 

救急車が来た

 

救急隊員が俺を無理やり侑士から引き剥がして侑士は車に乗せられた

侑士の微かに残るぬくもりが離れた

 

血まみれの俺は救急隊員に怪我していると勘違いされたのか一緒に救急車に乗せられた

 

 

 

 

 

救急車の中でずっと俺は侑士の手を握っていた

救急隊員が俺についている血を拭おうとしたけれど俺はそれを拒否した。

 

ただ俺は一秒でも長く侑士と一緒に居たかった

 

 

 

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守りたかったんや

ただそれだけ

 

 

他の理由なんていらんやろ?

 

 

 

 

 

 

 

あの日、関東大会で青学に負けた次の日、岳人は落ち込んでた

 

 

話しかけても上の空で何か思いつめてるみたいやった

試合に負けたんは自分のせいやってずっと自分を責めてた

 

 

 

 

試合の後岳人は監督にこう言ったらしい

 

「俺はレギュラー落ちしても構わない。けど、侑士は落とさないでください。侑士は、シングルスでも十分やっていけるんです」

 

 

 

 

 

意味わからへん

 

あの負けず嫌いが

 

 

一番試合に負けて悔しかったのは自分やのに

 

 

 

何で俺を庇おうとするねん

何でもっと俺に頼ってくれへんねん

 

 

ほんまに、アホや

 

 

 

 

 

岳人はその日、徹底的に俺を避けてた

 

行きもわざわざ時間ずらして登校して、合同体育はサボりよるし。

 

 

 

帰りこそは話そうと思とったのに、こういうときに限ってHRが長引く。

教室の窓から岳人が走っていく姿が見えて思わず立ち上がった。

 

「先生堪忍!今日用事あってん!さいなら!」

 

 

 

 

追いかけな、あかん気がした

なんでかわからんけど

 

 

第六感ってやつ?

 

 

 

 

 

岳人の姿を見つけたとき岳人はぼーっとしてふらふらした足取りで歩いてた

上の空で、そのまま、横断歩道を渡ろうとしてた

 

 

 

信号は、赤

 

車が、来てた

 

 

 

 

カバンを捨てて自分でも驚くくらいの瞬発力で飛び出してた

 

 

そっからは・・・・・・真っ赤

 

 

 

 

あー轢かれたんやなぁって意識はあったけど痺れるような感覚で目も開かん、体も動かん

 

せやけど、岳人が俺を呼ぶ声だけは驚くくらいによく聞こえた

 

 

 

 

 

救急車に乗せられて、岳人が俺の手を握ってた

 

ぼんやり覚えてるのはその辺まで

 

 

 

その後の意識はない

ぷっつりとそこで途切れた

 

 

 

 

俺は、死んだんや

 

 

 

 

最後まで気になってたのは岳人のこと

 

俺が死んでも大丈夫なんかなぁとか、誰とダブルス組むんかなとか

 

 

 

 

 

 

でもなぁ岳人

 

 

 

 

俺、お前を庇って死ねて幸せやで?

 

 

せやから 

お前のせいで俺が死んだなんて思わんといてや

 

 

 

 

だって

 

 

 

お前も俺を庇ってくれたやろ?

 

 

 

 

 

せやから、落ち込んでんとちゃんと立ち直らなあかんで?

 

ほんで、空に向かって満面の笑み向けてな

 

 

 

そしたら

 

 

 

 

俺にはちゃんと届くから

 

 

 

 

 

 

〜END〜

 

 

 

 

rioさんへ1500Hitで捧げます。

リクは忍足死ネタでした。

あまり岳人視点でばかり書くと忍足メインな気がしなかったので途中で視点切り替えというこざかしい技を使わせて頂きました。

今回文章量をシンプルに、少なく、どちらかというとポエムちっくに書いたのでいつもの文と違い少し読みやすいと思います・・・(たぶん)

ちなみにタイトルの『PROTECTS』とは英語で{守る・庇う}という意味です。

rioさんリクありがとうございました!

 

 

 

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