18.世界がれたのか、俺が壊れてしまったのか?

 

 

 

人並みのことはやったつもり、経験してきたつもりだった。

やはりそれなりに恋もすれば、悩んだりもして、多少のずれはあったとしてもごく普通の人生を送っていると自負していた。

 

 

 

 

だからこのプログラム、通称「バトルロワイアル」に選ばれた時も、部長という責任感からか、外面には出さずとも、酷くうろたえた。

 

 

 

 

生き残れるのは一人。

 

それを聞いても、俺はその一人になる気等さらさらなかった。

 

ゲームに乗るという選択など、ちらりとも浮かばなかった。

 

 

 

だから俺は、不動峰の此処にいる連中は全員そう思っていると勝手に思いこんだ。

 

”アレ”に遭遇してしまうまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見開かれた瞳は白く濁り、肌は土気色に変色しまるで生気がない。

そうやって、”ソレ”は其処に存在していた。

 

 

 

 

「神尾・・・・・?」

 

 

おそるおそる、名前を呼ぶとえらく久しぶりにその響きを聞いた気がした。

 

 

神尾・・・いや、神尾だったモノというべきなのか?は微動だにしない。

ギョッと見開かれた目が俺を捉えて離さない気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「死んで・・・るの・・か?」

 

 

 

 

 

 

 

「橘さん。どうかしたんですか?」

 

 

 

幻聴かと思った。

 

 

一瞬、俺はありもしないことを考えた。

 

 

”神尾が、喋った”と。

 

 

 

あまりにも声の主と神尾の持っていた雰囲気が似すぎていて。

 

 

 

聞き間違えるはずのない神尾の声を。

 

 

 

俺は、神尾が喋ったんだと。

 

そう、思ったんだ。

 

 

 

 

 

だがそんなことは現実には起こりえるはずがなく。

 

 

辺りをきょろきょろと見渡す俺に、声の主はクスクスと笑いながら姿を現した。

 

 

 

 

 

 

「ココだよ、橘さん」

 

 

 

 

 

「!・・・深司」

 

 

 

 

 

伊武深司。

 

それが彼の名だった。

声の正体だった。

 

 

深司は、いつものようにさらりと前髪をかき上げた。

その右手には、鈍い光を放つ鉄の塊が握られていた。

 

 

俺は一瞬で悟った。

 

 

深司は・・・コイツは、神尾を殺したんだ、と。

 

 

 

 

 

 

「深司。落ち着いて聞いてくれ」

 

「落ち着け?落ち着いた方がいいのは橘さんの方じゃないのかなあ」

 

深司はそう言ってまた、くすくすと笑った。

俺は、自分の体が僅かに震えていることに気がついた。

 

 

 

「深司。おふざけじゃないんだぞ」

 

 

 

 

「・・・ああ、はい。どうぞ」

 

笑いを止めて、そう譲った深司の表情は冷め切っていた。

 

 

 

 

 

「どうして、神尾を殺した?」

 

「?・・・・どうして?って?」

 

「ああ」

 

 

深司はきょとんとした顔で俺を見た。

そして数秒考え込む様子を見せると虚しそうに笑った。

 

 

「何だよ調子狂っちゃうなあ・・・マジメな顔して何言い出すかと思ったら・・・そんなこと」

「そんな事!?」

 

 

 

「嫌だなぁ橘さん。落ち着いてくださいよ。俺、間違ったことしたってこれっぽっちも思ってませんから」

 

「・・・間違っていない、だと?」

 

 

 

徐々に怒りを帯びてきた俺とは対照的に、深司はしらっとした顔で答えた。

 

「はい」

「仲間を、親友を殺すことがどうして正しいんだ!?」

 

 

 

 

深司はふぅと深いため息をつくと、俺の目をしっかりと見据えた。

 

「だって、これ”ゲーム”でしょ」

 

「!」

 

「いつもやってるじゃないですか、テニスでも。それが、殺し合いになっただけでしょ?ちゃんとルールもフェアにできてるしみんな参加した以上は殺しあう意思があるってことだよね。」

 

 

 

 

ああ、もう。

 

 

もう俺の知っている”深司”はもう。

 

 

 

 

 

「狂ってる・・・」

 

深司はそんな俺の様子を冷めた目で眺めると、銃を俺に向けた。

 

 

「ねえ橘さん。俺は何も変わっちゃいないし、狂ってもいないよ。」

 

「・・・・どういう、こと、だ?」

 

 

 

 

 

「だって」

深司はくすりと笑った。

 

 

「              」

 

 

そのとき見せた深司の笑顔を橘は懐かしく感じた。

 

 

昔の・・・いや、数日前の深司と今の深司を重ねて見ていた。

 

重ねてはいけないのに。

今の深司は最早狂ってしまっているというのに。

 

でも、俺はこのとき確かに昔の深司と今の深司が同じに見えたんだ―――

 

 

 

 

 

 

数秒後、一発の銃声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あぁ・・・・?!俺は・・!」

 

 

 

俺の手には銃。

目の前には絶命した深司。

 

俺は、”深司を殺した”んだ。

 

 

 

 

何故だ、どうして。

 

俺はあんなにゲームには乗らない、と。

人は殺さない、と。

 

 

 

 

だけど俺は、あの笑顔を見たとき、何故か引き金を引いていた・・・

 

 

 

 

 

 

深司の最後の言葉が蘇る。

 

 

 

 

「だって、この世界が狂っているんだから」

 

 

 

 

 

 

本当に、そうなのか?

 

 

 

 

俺の、深司のしたことは、正当化されるのか?

 

 

仲間を殺すという、罪深い行為が。

 

”何もしてない”で通用するのか?

 

 

 

俺達は、狂って……壊れていなかった、と言えるのか?

 

全てをこの世界に委ねて、自分は正しいと言い張れるか?

 

 

 

 

 

 

 

わからない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界が壊れてしまったのか、俺が壊れてしまったのか――――

 

 

誰か、教えてくれ――――

 

 

 

 

 

 

*後書き*

不動峰二つ目のお話です。

橘は基本的にゲームには乗らないなと思いました。

このゲームの真偽を考えていると頭がおかしくなりそうですよね。

そんな心情を橘と深司の二人を通して描けていたらいいなあと思います。

文章力が乏しいのでいろいろ深読みしてやってくださいませ!

ではでは読んでいただいてありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送