俺の手は、真っ赤。

 

 

 


12.俺の手は真っ赤なんだ、お前の涙も混じってる

 

 

アイツと行動してもう3日目になる。

このゲームも、もうすぐタイムリミット。

生存者は、確かまだ5人以上残っている。

 

俺たちもそのうちの二人。

 

「深司」

呼びかけると、アイツはさらさらの髪・・・・いや、もとい、絡まりあいもつれ合った髪をなびかせ振り向いた。

 

 

「何、今話しかけないでほしいんだけどなあ」

「何暗いこと言ってんだよ!」

「・・・・何。じゃあ神尾はこんな状況で明るく楽しく振舞えっていうわけ?」

「別にそんなこと言ってねぇだろ!・・・たださ、最後にやっぱ悔い、残したくないじゃん・・・。」

 

そう言って俺は右手で首輪をいじる。

この3日の間にすっかり癖になってしまった仕草。

最初は鬱陶しくてたまらなくて触っていたのに、今は何気なく触っている。

相変わらずその感触は金属の持つ独特の冷たい感触。

 

 

「へえ・・・・神尾は、死ぬ気なんだ?」

「・・・・は?」

「だから、生き残るつもりないのかってこと」

「何言ってんだよ・・・んなの・・無理に決まってんだろ・・?」

 

深司は髪をかき上げ涼しげな顔をしている。

綺麗な横顔は、少し冷たくも感じられる。

俺は深司の横顔に少なからず恐怖を覚えた。

 

「無理じゃない。だって・・・あと3時間くらいあるだろ、単純に計算して残ってるのは俺たちを抜いてあと6人だから30分に一人ペースで殺せば生き残れると思うんだけど」

「・・・・な、何言ってんだよ深司・・冗談だろ?」

「マジだけど」

 

思わずごくり、と唾を飲んだ

・・・生き残れる?俺たちが・・・?

 

思い出した。

あの日常を。プログラムに放り込まれる前の、幸せな日常を。

 

未来を無限に信じて、毎日をただ楽しく過ごせればそれでよかった日常。

暖かい家族がいた日常。

 

その、日常に・・・・戻れるっていうのか?

 

 

 

 

俺の追憶は一人の声によって突如切断された。

 

 

「おーいっ!深司、アキラ!!!」

向こうから片手を大きく振って走ってくる人物がいる

黒いジャージが似合う長身、そして頭に巻いたタオル・・・・あいつしか居ない。

 

「石田!!お前・・・・生きてたの・・・か・・!?

駆け寄ろうとした。

そして、石田が生きていたという事実に素直に喜ぼうとした・・・・だけど、俺の言葉は途中で遮られた。

 

一発の銃声によって。

 

 

石田の大きな体が数秒宙に舞い、次の瞬間地面にたたきつけられる。

そして、左胸からは噴水のごとく血が噴き出す。

石田の体は、数回痙攣すると静かになった。

 

隣りを見ると、深司は銃を撃った直後の形をして、先ほどの冷たいともとれる表情を浮かべて立っていた。

銃からは硝煙反応の白い煙が静かに出ている。

 

 

「し・・・・深司・・・・?」

おそるおそる呼びかけると、深司は構えたままの銃をおろして「ん?」といつものように俺を見た。

その表情一つ変えない態度に物凄い恐怖を感じた。

 

 

「お前・・・何で・・・・何で殺したんだよ・・!」

「え?決まってるじゃん。優勝するためでしょ。」

 

「でも・・・・・仲間じゃねぇか!なのに・・・!」

 

「アキラ。このゲームは生き残れるのは一人なんだよ、仲間であろうと何であろうと殺さないと、もう時間もないんだし間に合わないじゃん。それに、アキラさっき『生き残りたい』って思ったでしょ?」

「でも・・・・!こんなこと・・・・俺は望んでねぇっ・・!それに、深司。お前、そんなこと言って最後には俺も殺すつもりなんだろ!?生き残れるのは一人なんだから!!」

 

 

俺は完全に逆上していた。

どうして深司はこんな平気な顔をしているんだ?

俺は石田の驚愕の表情を見るたび胸が痛むというのに

どうして どうして

人一人の命を奪っておいて

 

こんなに涼しげな顔をしてられるんだ・・・!?

 

 

このままじゃ・・・殺される。

俺はただ、最後の時間を精一杯すごしたかっただけなのに

最後まで、仲間との「絆」を感じて死にたかったのに・・・!

 

 

 

 

「深司。お前・・・・おかしいよ」

 

今まで表情を崩さなかった深司の目が大きく見開いた気がした。

俺は、目に涙をためながら引き金を引く。

 

 

深司・・・・悪いけど、俺。

 

不動峰のみんなを、『仲間』を守りたい

 

 

 

 

引き金を引く瞬間、深司はフッと笑って言った。

 

「酷いよなあ、俺はアキラを優勝させたかっただけなのに。アキラは結局、俺より他の奴等を選んだんだからさ・・・・」

 

「!?」

 

皮肉にも、深司の最後のボヤキは銃声にかき消されることなく真っ直ぐに俺の耳に届いた

 

 

「深・・司!?」

思わず深司にかけよったけれど、最早深司に呼吸はなく、心臓も停止していた。

そして、深司の頬には『涙』の跡。

すっと涙を拭うと、深司の血と混ざって何ともいえない色に変化した

 

「おい・・・深司!深司!!」

体を抱き寄せると、驚くほどに軽かった。

 

こいつ・・・こんなに軽かったっけ・・・?

 

 

やっと理解した

俺がこの3日間、どうして誰にも攻撃されずに過ごせたのか

 

深司が、ずっと神経を削って眠らず見張っていたから・・・。

俺は、馬鹿だった。

不動峰のやつ等は全然ゲームに乗っていない、だから攻撃されないと思っていた

影で、深司がどれほどの労力を使っているのかも知らずに。

 

 

 

「深司・・・・・ごめん!!俺・・お前のこと・・・そんなつもりじゃなかったんだ・・・!お前だって・・・大切な『仲間』だったのに・・・・・」

 

 

最低だ。

 

『仲間』を殺したのは俺だ。

 

 

 

手のひらを見ると、深司の血。

 

『仲間』の血・・仲間を殺した証。

 

 

 

 

その血は驚くほどに真っ赤で。

 

 

深司があのとき頬に流した涙も混ざっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

*後書き*

一応全校書いておきたかったのでどこかで不動峰を登場させようと思っていました。

まだルドルフ出てないですね・・・(笑)

神尾&伊武ペアは大好きなので、愛情を込めて書きました。

深司ってつくづく損な性格だな、と思いつつ・・・石田さんがゲームに乗っていたかどうかはご想像にお任せします。

ではではお読みいただき有難うございました!!

 

 

 

 

 

 

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