「長太郎!逃げろーーーーーーーっっ!!!」
貴方の最期の言葉。
次の瞬間、貴方の命はばらばらに飛び散って。
小さな体が数秒宙に踊って。
数秒後。
わずかに残るは肉片。帽子。
『長太郎、生きろ。例え俺が死んでも。』
数時間前の貴方の言葉。
例え俺が死んでも・・・・って貴方は初めからそのつもりだったんだ。
俺を庇って、死ぬつもりだったんだ。
今さらながら自分の愚かさに腹が立つ。
貴方がいつも被っていた帽子を手に取ると、驚くほどに軽かった。
使いすぎて擦り切れた帽子。
俺は帽子を手に取ると、静かに涙を流した。
涙は、ぽとりと音を立てて帽子の中へ落ちた。
04.俺は貴方のために生きていたかった
「もうこの放送も最期であろうと予想される。新たな死亡者は宍戸亮のみ。残りは2名だ。」
担当教官の淡々としたつまらない放送。
今までは大して興味深いものでもなかったが、今回は別だ。
残り・・・・2名。
それは、もうこの島で生存しているのは俺と貴方を殺した奴だけだという証明。
この島の中で、呼吸をして、動けて、まだ声を出せる人間はもう二人しかいないということ。
憎むべき相手、そして、この俺。
「まさか、あなただとは思いませんでしたよ。芥川先輩。」
芥川先輩に声をかけられたのは、放送から1時間としないところだった。
「んー?俺鳳だってわかってたC〜。ちゃんとメモしてるから☆」
芥川先輩は地図をポケットから出して俺に向けた。
地図には部員の名前がずらりと並び、死んだやつの名前には×印がつけてある。
最初俺がやろうとしたことだった。
でも、宍戸さんに『やめとけ、そんな存在を否定するようなこと。縁起でもねぇだろ。』と言われやめたのだが。
どうせあと誰が残っているかなんて関係ない、関係あるのは宍戸さんの生死だけ。
そう思っていた。
芥川先輩は地図を元通りにたたんで仕舞うと、次の瞬間寒気のするようなぞっとする笑みを浮かべた。
この人のどこにこんな笑みが潜んでいたのだろう。
そして今、芥川先輩の手には、小柄な先輩に不相応な巨大な銃。
貴方と、仲間を撃ち殺したあの銃。
穢れた銃。
「んーじゃ、俺も早く優勝したいC〜。鳳も宍戸と一緒のとこに連れてってあげる。」
俺もジャージのポケットから銃を取り出した。
まだ使ったことのない、真新しい銃。
もう使うことはないだろう、と踏んでいた銃。
こんなカタチで使うなんて思いもしなかったけれど。
「俺は死ねません。」
俺は真っ直ぐに芥川先輩を見た。
芥川先輩は突き刺すような視線で見返してきた。
「なんで?」
いつもの可愛らしい声とは裏腹の、鋭く尖った声だった。
「宍戸さんと約束しました。」
俺がそう答えると、芥川先輩は何故か楽しそうに笑ってこう言った。
「ふーん・・・・・・そ。じゃ、Eーよ。銃撃戦〜♪殺せば勝ち。簡単だよね。」
言うなり、先輩は銃をかまえ引き金を引いた。
その動作は実にスムーズだった。
パン!
弾が、飛んでくる。
避けろ。
避けなきゃ。
撃て。
撃てよ。
真正面に標的はいるんだ。
そう、脳は指示しているのに。
・・・・・なんで。
なんで撃てない?
なぜ体が動かない?
このままじゃ、宍戸さんとの約束を果たせない。
そう、思っているのに。
俺の指はまるで誰かに押さえつけられているかのように微動だにしない。
宍戸・・・さん?
『やめろ』
ふいに、そんな声が頭に響いた。
ああ、そうか。
宍戸さん。
やっと解りました。
貴方が何を伝えたかったのか。
生きろの意味を。
このゲームで生きるんじゃない。
仇を取るんでもない。
鳳長太郎という人生を生きろ、そういう意味・・・・だったんですね。
でも、それでも。
宍戸さん。
「俺は貴方のために生きていたかった。」
俺の心臓を鉄が貫く。
さよなら、鳳長太郎。
さよなら、バトルロワイアル。
*後書き*
この話はもう大分前から構想は練っていました。
1つは鳳宍要素を入れた話を書きたかったので・・・。
最期の文句も大分前から考えていました。
タイトルを見た瞬間、これは鳳宍を書けというお題なんじゃないかと思いました。(笑)
生きるという言葉は本当にいろんな意味が含まれているなあと思いました。
お読みいただきありがとうございました。
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||