ああ・・・・なんでこの手はこんなに汚れてんだ。

 

 

他人の血で。

 

 

 

 

03.真っに、真っ黒に染まっていくこの世界

 

 

 

 

 

 

 

 

マジで、無我夢中。

 

 

ぴったりの表現。

 

 

 

 

 

俺の知らないとこでゲームは勝手に始まって、勝手に俺の順番が来てて、俺の脳は勝手にゲームに乗ってた。

 

 

 

誰を殺したんだろ、覚えてねぇや。

 

 

もしかして、真田副部長や仁王先輩とかも殺してるかもしれない。

 

 

 

 

自分の記憶なのに覚えてねーなんて、ほんっと馬鹿だしダセーよ俺。

 

 

これって俗に言う、「本能のままに動く」ってやつ?

 

 

 

 

もういっそそのまま理性なんて俺に返さなきゃいいのに、ふいに俺に理性は帰ってきた。

 

 

 

 

理性が戻ってきたとき、俺のジャージは血まみれで、俺の手も全部血で汚れていた。

 

でも、不思議とどこも痛くないのは他人の血だからだろう。

 

 

 

 

手のひらは”何かを握った跡”が多数。

 

 

 

 

ディバックの中には知らぬ間に予備の食料と水が一杯。

 

 

 

見たことも使ったこともないようなライフルやマシンガンもその中に納まっていたから驚きだ。

 

ためしに一つ手にとってみると、”何かを握った跡”とぴったり一致したから怖くて即しまったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湖を見つけた。

 

湖面は太陽の光を反射してキラキラと輝いている。

 

 

 

 

綺麗な湖だな・・・・・

 

 

 

 

よし、手洗おう。

 

 

 

 

誰のとも知れない血をこびりつけておくのは不快だった。

 

 

 

 

 

 

湖の前にしゃがみこむと、綺麗な湖面に俺の顔が映った。

 

 

湖面に映った俺の顔。

 

 

 

 

まるで般若だった。

 

目は赤く充血して、顔面の血の気はなく、変わりに赤黒い血がこびりついてすげぇ形相。

 

 

 

 

 

あー・・・・・まじ。

 

俺こんな顔してたのかよ・・・・・。

 

 

 

 

自分の顔ながらショックを受けた。

 

 

俺の本能は一体何をしでかしたのだろう。

 

これほどまでに醜い人間の顔を俺は今まで見たことがない。

 

 

 

 

ショックを受けながらも俺は手を洗えば何か報われる気がしたから、手を洗う作業を続行することにした。

 

両腕のジャージをまくると両手は、いや、両手のひらから肘にかけたところあたりか・・・までは、どす黒い血の色に染まっている。

 

 

 

うっわきたねぇ。

 

血ってこんなに黒いのかよ・・・・。

 

 

 

少々ショックを受けつつも、俺は湖に手を浸した。

 

 

綺麗な湖に俺の汚い腕が吸い込まれていく。

 

湖には申し訳ないが、俺は湖の中で両手を擦り合わせた。

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

周りにちゃぷちゃぷという水音だけが響く。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

取れねー!

 

 

 

 

 

こびりついた黒い血は洗ってもなかなか落ちない。

 

なかなか取れない血を見ているとて腹が立ってくる。

 

 

 

 

 

「くっ・・・・そ!このやろ!」

 

 

 

むきになって、ごしごし、と俺は渾身の力を込めて両手を擦り合わせた。

 

少しずつ手の周りの水が赤茶色に染まっていく。

 

 

 

 

「よっしゃっ!」

 

 

 

傍から見れば異常な光景だ。

 

手を異常なまでに強く擦り合わせて楽しそうに笑う少年。

 

 

 

 

 

俺はきっと夢中になっていたんだろう。

 

 

黒い血がどんどん湖に溶け込んでいく・・・その光景に見とれていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

突然ガン、と頭に鈍い衝撃。

 

 

 

 

振り向く間もなく、俺の意識はまるで水の中にいるかのようにふらふらで。

 

 

俺の体は湖の中へ吸い込まれていく。

 

 

 

 

どんどん・・・・どんどん。

 

 

 

 

頭から出て湖に染み出した血はさっきまで必死で落としていた血と対称的にすげぇ赤かった。

 

 

 

 

 

「マジ・・・・・・きれー。」

 

 

 

 

素直な感想を述べた。

 

それが最期の言葉になると知ってか知らずか。

 

 

 

 

最期に浮かんだ色は、さっきまでの血の黒さと今見ている自分の血の赤さ。

 

 

 

 

真っ赤に、真っ黒に染まっていくこの世界で。

 

 

 

 

 

 

*後書き*

こじつけです。(笑)

真っ赤は、最初は切原の瞳にしようと思っていたのですが、予定変更しました。

ただ手を洗っているだけのお話のようです。(笑)

思いっきり赤也視点で書けたので楽しかったです。

余りに申し訳ないので、赤也はもう少し後のお話でリベンジしたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。

 

 

 

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